運動エネルギーを使った砲弾の貫通判定

砲弾(徹甲弾)が装甲を貫通する計算をシンプルな物理計算式で考えてみました。空気抵抗や距離、進入角度等は考慮せず概算で計算します。

運動エネルギーと反発力で等式を立てて、当時のドイツ軍の貫通データを参考に装甲の抵抗力を求めてみました。

装甲の抵抗力を求める

装甲の抵抗力(当時の鋼鉄の強さ)がわかれば、弾丸の重さと口径、速度の値でどれだけ装甲を深く貫通できるかを計算することができます。データを使って調べていきます。

パンター戦車(Kwk42/L70)の砲
砲弾の重量:6.8[kg]
初速:935[m/s]
砲弾の直径:75[mm]
装甲貫通力:138[mm]

最初に砲弾の断面積を求めます。単位はmに直します。
円の面積は半径の二乗×円周率なので
(0.075 / 2)2 * PI = 0.0044[m2]

運動エネルギーは1/2×質量×速度2なので
0.5 * 6.8 * 9352 = 2972365[J]

装甲の抵抗力は
1/2×質量×速度2 = 断面積×抵抗力×侵徹長
抵抗力=(1/2×質量×速度2)÷(断面積×侵徹長)となるので
2972365 / (0.0044 * 0.138) = 4,875,000,000[N/m2]

ティーガー戦車(Kwk36/L56)の砲
砲弾の重量:10.2[kg]
初速:810[m/s]
砲弾の直径:88[mm]
装甲貫通力:120[mm]

同じように計算すると、装甲の抵抗力は4,584,000,000[N/m2]ぐらいです。

他の砲弾データを使ってもだいたいこの辺りの数値が出るので、平均を取って4,650,000,000[N/m2]あたりを抵抗力の定数とするとよいと思います。

例題

抵抗力の定数を決めたことで、速度や重量の値を入れ替えればどれくらいの貫通力を得られるか計算できます。

必要な装甲の厚みを求める

三号戦車の砲弾を防ぐために必要な装甲の厚みを求める

三号戦車L型(Kwk39/L60)の砲
砲弾の重量:2.06[kg]
初速:835[m/s]
砲弾の直径:50[mm]

侵徹長=(1/2×質量×速度2)÷(断面積×抵抗力)なので
1/2 * 2.06 * 8352 / (0.00196*4650000000)
= 0.07865518

7.8cm以上の厚みの鋼鉄があれば防ぐことができそうです。

必要な初速を求める

重量6.8kg、直径7.5cmの砲弾でティーガー戦車の前面装甲(102mm)を撃ち抜くために必要な初速を求める

速度2= 2×抵抗力×断面積×侵徹長÷質量なので
= 2 * 4650000000 * 0.0044 * 0.102 / 6.8
= 613800

速度 = √613800 = 783.45m/s2

初速783.45m/s2以上で発射できる火薬を使えば装甲を撃ち抜けそうですね。

ちなみにこれは駆逐戦車ヘッツァーに搭載されているPak39で使われていた砲弾で、データによると初速は790m/s2で10.6cmを撃ち抜けたとありますので割と近い計算結果なんじゃないかと思います。

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